グリーンランド 中谷芙二子+宇吉郎展に行ってきた

雲の中にたたずむ

前から気になっていたので体験しに行ってきました。
室内で霧を作ってみるというものです。

雪を研究していた中谷宇吉郎さんという方と、その娘さんの芙二子さん。この方は霧のアーティストをして活躍されている方です。
雪と霧、自然のもたらす水がテーマで、宇吉郎さんは晩年雪氷について研究をされていたそうです。グリーランドでの研究姿の展示とともに、室内で霧を発生させるという娘さんの芙二子さんの取り組みでした。

父の足跡をたどるような旅の一環で行われたような気もする展示でした。

山の中を歩いていると、向こうから白い壁が急に立ちはだかってその中に取り込まれ、壁が通過されるのを待つ。白い世界がすうっと晴れていくことを、尾瀬で体験したことがあります。なんとなくそのことを思い出しながら会場に向かいました。

銀座メゾンエルメスフォーラムはお店のエルメスを通過していきます。以前はよく前を通過していっていたのにこのお店に入ったことがなかったのです。(縁がないというか)
ブロックガラスの壁を氷に見立てた会場は、明るくて天井が高くて、空気がしっとりとした場所でした。父の研究状況を録画した映像が流れ、当時の研究風景を忍ばせるものが展示、そして手書きの様々な雪や氷のメモ。目で見て手を動かすという昔から人が行ってきたことが新鮮でした。氷を曲げる、(曲がる!)詳細な手書きの美しさにも驚きました。

会場に入った時、会場全体が薄い霧に包まれていて、ちょうど霧の実演が終わったところだと教えていただきました。会場を見て回っていれば次の霧の実演を体験できる。霧の発生装置は、夏の涼しさを作り出す霧状の水を作り出す装置に似ていました。建物の中で霧を起こすということはどれだけ湿度が必要なんだろう?

装置の前で待っていると、案内の方が、「最初は下から霧が出て、次は上からでて、そのあと少し止まります。そのあと上から霧が出て、下から霧が出て…」と説明してくださいました。ああ楽しみ。どんな霧なんだろう、霧ってどんなんだっけ。ドキドキしながら待っていると、下のパイプから霧がシュウっと噴き出してきました。みるみるうちに床が白く染まってゆき、上から噴き出していくと上から霧が降ってきました。霧は水。粉糠雨に降られたように、着ていたコートに細かな水滴が生まれる、水流のない水の中に入ったように水に包まれる。視界は白くなり、雲の中を歩くような感じでした。飛行機の上から見る雲は、ふわふわなのでその上を歩けそうな気がするけど、今はその中に立っているような。霧のはかなさを思い知る(雲のはかなさ)体験でした。
歓声を上げた後、霧の中を歩く人々、そして装置が止まると霧は霧消してしまう。元の空間に戻ってしまう。短い時間に起こる出来事は、会場に滞在する鑑賞者の人数によっても霧の残り具合などが変わると思うし、それぞれ体験があるかと思うので、毎回違ってくるでしょう。人工的に機械を使って生み出す霧に、私ははかなさを感じます。


中谷宇吉郎さんの雪の科学館があるそうなので、そのうち行ってみようと思います。
kagashi-ss.co.jp/yuki-mus/yuki_home/
「雪は天から送られた手紙」だそうです。雪や雨から地球の過去、現在を知ることができる、そんな話をしてくれた人を思い出しました。