耳で聴かない音楽会に行ってきた



落合陽一さんと日本フィルハーモニー楽団のコラボレーションに行ってきました。
健常者なので、これを聞きにいくにはクラウドファンディングという方法になります。
なかなか目標金額にならなくて少し心配しましたが、この音楽会に立ち会えたことに感謝です。

聴こえるというのは、空気の振動が鼓膜に伝わるものです。
私の親族には、色々な事情で鼓膜が無くなり、補聴器や人口鼓膜で凌いでいる人がおりました。かなり大きな声で会話をしないと聞こえないのです。聞こえないということがどんな感覚なのか、自ら体験するには、水の中が近いのではないかと思います。

振動を感じることが音を感じることならば、と落合陽一さんは、soundjacketを製作されています。燕尾服の中に沢山のスピーカーが入っていて、音楽を肘や背中などで聞くことができます。このsoundjakectを試すことが出来ました。
身体のあちこちで音が聞こえる、皮膚の上で聴こえる感じでした。スピーカーの振動が皮膚に伝わる。短い間でしたが、細かな振動が伝わるには肌でもっと感じてみたい、私も固定された(椅子に座って)でなく聞いてみたいと思いました。
音楽会の中で、ラデツキー行進曲の一節をこのsoundjacketを羽織って指揮をする、という企画がありました。指揮を行った体験者はゆっくりと指揮し、そしてリズムが少しバラついていました。子供達だったからかもしれない、この曲を知らなかったからかも知れない。一人男性が指揮を行いましたが、終わった後に、このシステムを使って、耳の聞こえない人の指揮者が誕生するかも知れない、と言った時に、聞こえない人がリズムを刻む難しさ、そしてリズムを音の振動から読み取っていたことに改めて気づきました。自分の作ったリズムを振動として体感しつつ指揮を振る。指揮があっての音楽なのか、音によって振動を感じつつ次の未知の音の域に繋げていくのか、健常者には想像出来ない複雑な環境であること。

この他にhugballがあって、このボールを抱きしめると音の振動が伝わり、音に反応する光があり、音楽を視覚でも楽しめるようになっていました。
用意された演目の中に、ジョンケージの4分33秒がありました。
演奏家が弓を構え、譜面をめくり、時に軋む椅子の音、呼吸の間合い、といったものがあり、hugballが光ってリズムを刻む中、健常者の私は、演奏家の気配、空気を読んでいました。立場が逆転したような不安感の後、落合陽一さんの意図とは、と考える時間でした。
体験の交換のような、又は普段気に留めない空間を読むということを実感するものでした。

ガムランの中で使われる太鼓の音がわかるように、太鼓の音と連動して光るものがあると良いのになあと思っていたことを思い出しました。視覚でわかる音。視覚で理解したら踊りの振りがもっとわかりやすくなるのではないか(というくらい、はじめの頃は理解できなかった)。音が視覚化される、思っていたことが目の前で体験できた幸せ時間でした。

次の落合陽一さんと日本フィルハーモニー管弦楽団のコラボレーションはラベルのボレロを取り上げるそうです。これは体験しに行きたいです。平日なので色々難しいけど、なんとかして行き