ざわざわと まるで水の中のように

夜中じゅう、ずっと風が唸る音を聞いています。
うとうとしながら、ふと目が覚めた時。
近くの木々のしなる枝音、葉のこすれ合う音
遠くの送電線が唸る音。
こんな日は、送電線がぱちぱちと火花を散らして
光っているのではないかと思うくらい。

インドネシアではほんとに送電線がぱちぱちと火花を
散らしていました。村から見る送電線基地は、そこだけ強い光を放って別世界でした。
ヤシの向こうに上がる火花が、小さな魚のきらめきのよう、
りゅうりゅうと電線が鳴る姿を見ることができたのです。
ただ、あまり火花の飛ぶ夜は、すとんと
電気が止まってしまう危険日でもあり。
急に村々の明かりが消え、当たり真っ暗になってしまうのでした。
こんな風の強い日に、停電の向こうに見える空の美しいこと。
流れる雲に月明かり。星あかり。

外では風が唸っています。
今日もこの風の中を出ていかなければなりません。