人身事故とは

雨の朝、京浜東北線大井町の駅は、黒い人の頭であふれていました。
並べられた黒頭はずらりと列をつくり、びっしりと空間を埋め尽くしていました。
ランダムにうごめく黒頭はほとんど見当たらず、一定の方式を持って動く黒頭。
詰め込みようのない位の電車が出入りするたびに、黒頭はうごめいていました。
そして、私もその黒頭を形成した一人です。


ことの原因は、人身事故でした。
人身事故、という言葉に包み隠されたのは人の死です。それも多くは故意に絶つ命。
ほぼ毎日のように人身事故の表示を掲示板で見る。
毎日のように、人の死に接していることを見て見ぬ振りをしながら通勤しています。
朝夕の人身事故は勘弁してほしい。
電車が混む、時間が読めない、仕事に間に合わない。
それは生きている人たちの、希望です。
故意に命を絶つことでさえ、見も知らずの人々に後ろ指を指される。
これがこの国の状況です。


自ら命を絶つことも自由でしょう。
けれど、その自由を行使しなくていいようにはならないものでしょうか。