天変地異に

一個人の私にとって、天変地異は無力です。
そしてもっと無力なのは、たくさんの人の意思が働くもの。
一人ひとりはそれぞれ違うのに、何かの拍子に、大きな塊となる。
今日の天変地異はまさにそのものでした。


台風の到来は久しぶり。
JRも首都圏はすべて止まり、私鉄の運行も滞った朝。
大勢の人たちが一度に、「会社へ!仕事へ!」
大きな意志の塊は、結果としてひとところに殺到し、右往左往するということになりました。
地下や建物の中で、人の意思が充満しにっちもさっちもいかなくなっていた時
地上に上がってすがすがしい空気にほっとしました。
海が近いせいもあるけれど、新鮮な海の匂いがする。
台風は海の飛沫も巻き上げて、血の騒ぐような空気をまき散らしていました。
蒼い木の葉を揺さぶり引きちぎり、風は縦横に吹きまわります。
人々の頭上高く飛びぬけていく雲は、時に白く、鈍く輝きながら空を支配します。
その向こうに、洗われた青光りした空。
これを楽しまずに何とする!


行きついた先の交通機関がすべてふさがれてしまっていたせいもありましたが
地図もあるし、知らない土地ではないので、徒歩で会社を目指しました。
天変地異でもなければこんな時間に歩くことを楽しめません。
風にあおられ、突然降りしきる雨に驚かされつつ、わくわくしながら歩いていました。
これで歩きやすい靴を履いていれば最高!ったのですけど。
地上を歩いて1時間強。遅れに遅れて会社にたどり着きました。
それまでの間、私は意志の塊から逃れて自由でした。


思えば、渋谷の駅から歩いていれば、もっと早く会社についたかな(笑)
会社では、「パワフルすぎる!」とのことでした。
これくらい体力がないと、踊りも何もやってられません。