古くて新しい機械


以前から布が大好きだったのですが、今、布にかかわる仕事についています。
影響はおそらく子供の頃に見たNHK特集のシルクロードからかと思いますが、中国の民族衣装が好きになり、形や刺繍を調べたり、民族音楽を聴くようになってからインドの更紗で服を作ったり、日本の着物の紬や、インドネシアに行けばバティックというろうけつ染めに心をときめかせ、織物も染めたものも大好きです。

布といっても、布になるまでには様々な工程があり、糸は綿や獣毛などの天然繊維や化学繊維から、織る作業には織機の存在があり、織機は古くからある機械の一つですが、動力が人間の手機から、最新の機械は最先端の技術が使われるものまで様々です。

私の仕事は、織機の中に組み込まれる筬(Reed)と綜絖(Heald)という部分にかかわっています。

色々説明してもらって、現在の活躍する自動織機も見せてもらっていたのですが、どうしても腑に落ちない、あまりにわからないことが多かったので、自分で織機を持ってみようと思ったのです。

スウェーデンの子供のおもちゃで、3歳以上からというものですが、自分で経糸を張り、シャトル緯糸を巻いて、2枚の綜絖枠を上げ下げしながら織ることができます。
織機の仕組みがよくわかります。

鶴の恩返しでトントンするのが筬、トントンすると経糸の間を通った緯糸がきゅっと締まります。経糸の張り加減の調整が悪いとどこに負担がかかるのか、糸と糸の間隔が広いと太い糸(付録の糸は毛糸)じゃないとスカスカになってしまう、当たり前のことが自分で作業(織ってみる)してみると納得することがいくつもありました。想像力があまりないので、やってみないとわからないのです。買ってみてよかった、自分で織ってみてみて良かったと思います。

緯糸を渡すシャトル(杼といいます)が早く動くといいのに(手で通している)。綜絖枠の上げ下げが自動で動いたらいいのに(おもちゃなので一回一回手で動かしています)。経糸がもっと滑りがいいといいな、経糸張り大変だぞ、シャトル緯糸、楽に巻けないかな、(このおもちゃのシャトルを想定して考えてみたら、昔からある糸巻き器の形に辿りついた)、綜絖枠もっと増やしたら綾織できるかな、などと考えると、機械化→自動織機にたどり着きました。豊田自動織機の初期の頃のものを上野の博物館で見てきましたが、今の自動織機とそんなに変わっていなかった。

鶴の恩返しで、男の家に織機があったというのは、普通の家に機械があったのかということで改めて驚きました。布って自家製だったこともあったんだ。民族博物館のテーマパーク的なところを見て回るのも好きなのですが、展示されている家のモデルの中に時々手機も置いてあって、織りかけの布ばかり見ていたので、なぜそこに織機があるのか思いつきませんでした。布は自分の家で織るもの。今までは工芸品としてあるけど、元々日常品だったことを忘れていました。
全部の家にあったわけではないと思うけど、織機がある家もそんなに珍しくなかったから、鶴の恩返しのような話も成立するのだろうなと。

あくまでおもちゃなので、この織機で織りあがったものは切り取ってコースター、頑張ってマフラーになるかどうかです。(このおもちゃのすごいところは比較的長い織物を織ることができるのです)もう少し細い糸で織りたいなあと思うと、綜絖と筬をもっと細かなものにしないといけないのですが、取り外しができないのです。(おもちゃなので安全第一)大人用の(?)織機も探してみたのですが、織物作家になりたいということでもなく、仕事に関することが知りたい目的なので、織機を作ってしまおうかなと思います。幸い手元に小さな織機は既にある。木材買ってきて、なんとなく自分でも作ることが出来そうな気がします。綜絖と筬だけ、仕事で扱うもので作ってみようかなと思います。こんな小さな織機でもちゃんと布を織ることができます!てなんだか楽しい。
早速職場の偉い人に織機の話をしてみたら、やってみたら(笑)!

相変わらずどこかおかしい今日この頃です。