大きな国とちいさな国と。

今日、マスクを2000枚、ジョグジャカルタに送りました。

インドネシアのジャワ島中部にムラピ山という活火山があります。
私が住んでいた地域からよく見えた美しい富士山のような活火山です。
いつも煙がたなびき、夜にはきらりと赤い光が見えることもある活火山。
この火山が先月末から大規模な噴火を繰り返し、死者が出て多くの避難民が発生しています。
以前、登ったこともあります。
高地だけあって涼しくて、滝があって、バティックの博物館があって。
過去の噴火の痕跡もはっきり残っていたのを覚えています。
廃墟になった家、ごつごつした溶岩。立ち入り禁止区域近くまで登ったと思います。
このムラピ山から30キロくらいかな。
私の住んでいたジョグジャカルタという王様のいる街があります。


インドネシアは実は、わりと大きな国です。
経済力はまだ、ちいさな国といえるでしょう。
ちいさな国の小さな町の活火山の噴火。
日本でもとりあげられることの少ないニュースでした。
日本はちいさな国です。
経済力で見れば、大きな国といえるでしょう。
何を持ってその国を見るのか。
情報や経済、科学技術、文化、さまざまな尺度で国の大きさは変わります。
情報を発信する力もまた、国の尺度にもなります。


ちいさな国の小さな街は今、日本語で相互扶助と訳される
gotong royongで災害にあった人たちを助けています。
自分の家に住まわせたり、大学を開放したり。
大統領が駆けつけて、緊急対策をしています。
自然のことは人間の力で何とかできるものではないけれど
人間のことは、人間でなんとかできるかもしれない。


ジョグジャカルタだけではなく、世界中で災害があり、戦争があり
病の蔓延があり、環境汚染があります。
私のちょっとした自分勝手で自己満足な心で
ジョグジャカルタにマスクを送ってしまったのですが
手を差し伸べたい、ということに国という単位は必要がない。
国の大きさも関係ない。
宗教も、考え方も歴史も、過去の遺恨も現在の競争も、未来の疑心暗鬼も。
できれば、災害時だけではなく
お互いを理解していける緩やかな関係性の共同体になっていければいいのに。


国。
というかたまりだけで、ものごとを、せめて自分の考えを決めてしまわないように。
囲いの中の、ひとつひとつの玉は、きっとそれぞれに違ってる。
大きな国も、ちいさな国も。