伝説の作られ方。「100,000年後の安全」

いろんなことを考えてはの繰り返し。

原人の頭骨。
聖書のこと。
コドモのころのキュリー夫人の伝記のこと。
大好きなゲド戦記
指輪物語
そして地震のこと、原発のこと。
私の中では一直線上に並ぶ体験でした。
まだまとまっていないし、ゆっくり考えてみたいけど、今のところまで。


ヒトがヒトである。
それは好奇心、なのでしょう。そしてこの好奇心ほど予想のできないもの。
この映画をいろんな立場でご覧になった方がいると思います。
原発が必要か、不必要か。
そのことについては、あえてここにかくつもりはありません。
私たちヒトの好奇心が生み出したものがどんなものだったのか。
そして未来にそのことをどう、伝えていこうとありとあらゆることを考えている
人たちの知恵と、予想と、希望と、ヒトの好奇心に対する不信感と。
安全と呼ばれてきたものの正体は、そうでもないらしいということは
知っていたけれど、腑に落ちたのはこの映画の中で語られている
「ヒト」という生き物の行動からでした。
ヒトは二度、「火」を手に入れた。
「火」を手に入れてから、ヒトは大きく飛躍を始めました。
そして今、二度目の「火」を埋める作業を始めています。
願わくば、二度と人目に触れぬよう、少なくとも100,000年は眠りについてもらうように。
そのための莫大な仕事量。
現在のヒトがありとあらゆる方法を考え抜き、予測する。
オンカロ」と呼ばれるその巨大な埋蔵施設が破壊されず、封印を解かれず
最低100,000年無傷でいてほしい。
この先、天変地異や戦争もあるだろう、経済危機もあるだろう、60,000年後には
氷河期に入るだろう。そして氷河期が過ぎた後、その地にヒトが入ってくるかもしれない。
その時に未来のヒトがオンカロを見つけ封印を解いてしまわないようにするには
どうしたらいいだろう?
そんな心配をしなければいけないものだったのか。


そこまで考えなければいけないほど
私たち、ヒトというものは好奇心でいっぱいなのです。
100年後がわからないのに、100,000年先の未来まで予測する。
100,000年前のヒトは、原人でした。
おそらく1度目の「火」に出会うか出会わないか。
当時を私たちは知ることができない。ルーン文字やエジプトの文字を解読するのに
どれくらい時間がかかったことだろう。
この危険性を伝えるために考え出された方法は、遠い昔の象形文字や感覚に訴える方法でした。
いや、それすら伝わるかどうかわからない。


指輪物語の最後に、金の魔法の指輪は火を噴く火山の火口へ落とされます。
古い言い伝えや神話や伝説。
危険と呼ばれるところに主人公は入っていく。
いろんな事情があったとしても、その根っこは好奇心だろう。
語られ、物語となり、歌となって伝えられていくのだろうか。
ゲド戦記の中で地下に広がる大宮殿が壊れるところを読んだ時
核の地下実験の映像が頭をよぎったことを思い出しました。
この二度目の「火」の物語が忘れ去られないようにしなければならない。
勇者によって封印を解かれてはならない。
少なくとも、100,000年の間は。
この途方もない物語の初めに私は立っています。
この物語の歌い出しはこうです。


「未来のみなさんへ


 ここは21世紀に処分された
 放射能廃棄物の埋蔵場所です。
 決して入らないでください。


 あなたを守るため
 地中奥深くに埋めました。

 
 放射性物質は大変危険です。
 透明で、においもありません。


 絶対に触れないでください。


 地上に戻って、我々より良い
 世界を作ってほしい。


 幸運を。」        映画のリーフレットより



この埋蔵場所はわずかな放射性物質しか納めることができません。
UPLINKで上映しています。
ちょっとここまで。ゆっくり考えたいです。