秘湯を巡る

写真がないので残念なのですが、お客様と上司のお供をすることがありました。
ゴルフができる訳でもなく、お酒が呑める訳でもない。ましてや仕事についての知識はまだまだ勉強中。
どんな顔をしてお供をしたら良いのやらと不安になりつつ、ついてゆきました。温泉に入る、その一言につられたのです。

テーマは秘湯。
上司からは水着持参の指示。
おやつにバナナは入るのか、などとお決まりの会話をしながら⁈車でジャカルタを出発し、南下して行きました。

ジャカルタからボゴール方面を走りながら、お客様が、
田舎らしくない、秘湯がありそうにない
とおっしゃるのも仕方ないと頷くのは、どこまでいってもバイクと車が多いからでした。
とはいいつつ、着いた所は緑豊かな田園風景でした。

車を降りて山路を少し登ると、テラスのように張り出した岩場に白い湯が湧いていて、その先には緑に濁る湯が。

お客様の一瞬怯む表情。
完全露天風呂で着替えスペースは湯の近くに掘っ建て小屋があるのみ。
上司は
はいろ〜!
ととっとと服を脱いで岩場に荷物を置いて、とぶんと湯に入ってしまいました。それを見たお客様も観念したかのようでした。
(水着着用してました)

私は試されてるかのようでした。
こんなとこ、嫌!
または
優雅かつ、大胆不敵に。

こういう時はもちろん後者選択。

掘っ建て小屋に入ると中も温泉が湧いていて、荷物を濡らさないよう水着に着替え、外に出てみました。お客様と上司は小学男子5年モードへ。愉しまなきゃ損です。
テラスの緑の湯に入って目の前に広がる田園風景をみたり、たらんと浸かっていたり。

湯は塩泉でかなり塩分があるので、泳ぎやすかったです(笑)
湯の床部分に溜まった湯の花をお互いに塗りつけたりしている旧小学生男子をみながら、湯の味見をしたり泳いだり。日焼けを気にしたら負けです、ケロリと笑って、はしゃいだもの勝ち。

温泉の家?的な屋台でインスタントラーメンを頼んで食べていたら、大人の顔に戻ったお客様が
ぼつりと
旨い、初めて食べた。と。
それを笑い飛ばす上司と私は、お客様曰く、私達はインドネシアで生活をするヒトで、自分は働くヒトなのだとおっしゃっていました。駐在員と現地採用者の違いは、そこ。
笑顔で返しながら、その違いの差を噛みしめる時間でもありました。


水着を着たまま塩でぺたぺたする肌の上に着替えを羽織り、次の秘湯へ。
15分位村を抜け、田んぼのあぜ道を歩いて行った先にある湯は、田んぼの真ん中にお椀をひっくり返したように岩が盛り上がった頂上に、直径1.5m位の丸い湯が湧くものでした。隠れるものなし。なーんにもなし(笑)
着替えどころじゃありません。
かんかんに照りつける11時に水着で温泉(笑)笑わずにはいられません。ツボ湯に旧小学生男子が仲良く浸かる姿や、二つあるツボ湯にそれぞれ所有権を宣言するよう浸かる姿を笑って何が悪いでしょう?
こちらも塩泉ですが、あたりの柔らかい湯でした。
夕方に来て、ランタンの灯りでお酒をたしなむっていいなとか、夜はどうかとか、呑気な話をしながらぬるめの湯に入っていました。
酒が入ると、帰りに岩肌を下れないだろう、駐車場から灯りのないあぜ道歩けないよな、いやいや現地人は大丈夫とか、旧小学生男子の会話を聞きながら、仕事とは別のしなやかな一面を体感することが出来て、色々と思いを巡らせていました。
しなやかな、柔軟な考えを持つヒトは駐在員として世界各地へ旅をしていくのだろう。
その土地に溶け込むヒトは現地採用者として、異国の地に根づくのだろう、といったこと。

日焼けが度を越してヒリヒリしてきた頃、(普段は日光に当たらない生活です) 真水を浴びずにその場で着替え、(流石に少し離れて茂みの中で着替えた) ゆるゆると帰途につきました。
お客様と上司に戻った旧小学生男子から、
連れてきた女性があなたで良かったと褒め言葉なんだかよくわからないお言葉をいただいた秘湯巡りでした。オトコ二人じゃ、何だかに間違えられそうだし、でも、
こんなとこ、嫌!
と拒否されても困ったし。
とのことでした。

たまにはちょといつもと違う時間を過ごすことも、いいでしょ。
たまのハレの日ですもの。
(ハレに変えた気もする)
ハレの時間はハレらしく振る舞う方が良いかと思います。

帰宅後の日焼けの痛みはちょと困りましたが、楽しい一日でした。
写真を撮れなかったのは残念なのですが、流石に塩気の着いた手でカメラを構える気になりませんでした。

もし、勇気のある方がいらっしゃいましたら、お声をかけてください。この秘湯をご案内いたします。