偶然出会う。 Tari Dolalak

先日土曜日のお稽古の時、偶然大学の友人が私を見つけて声をかけてきたのです。
13年ぶり!
元々彼女は地元の伝統芸能の踊り手で、当時から踊り手として生活をしていた人でした。
謙虚で大学で習う他の地域の踊りに影響されることなく、きちんと自分の地域の文化を守っていた人です。私が授業について行けない時、よく練習を手伝ってもらっていた友人です。


仕事でTaman Mini Indahに訪れて、私を発見するというのもすごいなと思うのですが、当時から仲の良かった気だての良い人でしたから
声をかけてくれたのだと思います。
まさかの再会で嬉しかったのです。
公演が終れば中部ジャワのPurworjoに戻る彼女です。
ほんとに神様に与えてもらった偶然の出来事でした。


彼女達が踊るのはDolalakという伝統芸能です。
オランダの影響を受けたと思われる衣装になぜか靴下。
そして短めのパンツを穿くのにストッキングを着用という
不思議な衣装なのですが、イスラム系の踊りであったことを考えるとさらに頭をひねりたくなります。


おそらく新しい文化としてジャワに入ってきた頃とは大きくさま変わりしています。
楽器に使われる太鼓やタンバリンが当時の面影を伝えています。
元々は男性が踊るものだったのが、若者、少年達になり、そして今は若い女性が踊るものになったこの踊りは、
angguk putriという名称のものもあります。
どちらもダンサーがトランスしてしまう(精霊が入ってしまう)芸能でもあり、夜通し行われるものでもあります。
今回は昼間の1時間半位で上演されたため、トランスは少ししかなかったのですが

演奏者(歌い手)がトランス状態なってしまう面白いことがありました。好きな芸能だったので、上演シーズンがスタートすると追っかけもしていたこともありましたが、演奏者がトランスにはいるのは初めてみました。
優雅でかつダイナミックなこの踊りはあまり知られていませんが、各グループには呪い師がいて、精霊がいて、この踊り手にはどの精霊が入る、途中でバラの花びらを食べさせる、お香を焚く、お供え物が必要など、得体の知れないものが満ち満ちているようにみえるのですが、病い平癒であったり、割礼であったりと、人々の生活の中で必要とされてきた芸能でもありました。

イスラムの文化が入ってきて、当時は最新の情報だったものが、ジャワに染まってくるにつれ、色々な形態に変化してゆきました。
馴染む。
土地の文化に触れて変化していく、そして今でも変化していく。衣装はオランダの占領時代の影響でしょうか。
靴下を穿かせる芸能はここだけではなく、東ジャワにもあります。
そしてサングラス。トランス状態(精霊がはいってしまう)では、白目を向いていたり、口から泡を吹いていたりしますが、サングラスをかけることで見てくれが良くなっています。
女性の踊り手がトランス状態になると、冷たい美しさというか、清楚に踊っていた姿が腰をうねらせ艶やかに踊ります。
今日初めて男性がトランス状態に入ったものを見ましたがもしかしたら、まだ男性が踊っていた頃の踊り手だったのかも。白髪で痩せた体で力強く踊る様に、正気に戻った時倒れるんじゃないかと心配しましたが、やっぱり倒れていました。
精霊が入った後、踊り手は精霊の趣くままに踊ります。
バラの花びらを食べ、気に入った観客に布を投げ共に踊ることを要求します。このコミュニケーションには
呪い師が手助けをしています。
そして、ある時呪い師によって精霊が踊り手から解き放たれます。
呪い師は踊り手の体を押さえ、耳に息を吹き込み、精霊を放ちます。
精霊が離れた踊り手はぐったりして周りに介抱されながら寝かされる、という流れです。


こうして書いてみると何が何だかわからない、と思われると思いつつ
見たままを書いています。
書きたくなる位、面白い、興味深い芸能なのです。