一区切りと次のこと

この半年間ほど、ジャカルタのYayasan Belantara Budayaというところで子供達にインドネシア舞踊を教えていました。
転職後、仕事先にも慣れてきて心に余裕が出てきたこと、少しだけ自分の時間を持てるようになってきたこと。たまたま通りがかった博物館で無料の伝統芸能を学べる場所を見つけたこと。見ればジャワガムランの絵もあり、ガムランも習いたかったので、改めて博物館に行ってみました。残念ながらガムランは教える人が居ないのでクラスはありませんでしたが、竹楽器のアンクルンと舞踊のクラスがあるということでした。
ジャカルタのbetawi舞踊を教えてる先生がいらっしゃって厳しく教えてる姿に、この人ならちゃんと学べる、質問も答えてくれそう!と興味を引かれて週に一度の土曜日午前中、通い始めました。毎回通える訳ではなかったけど、説明を求めればきちんと回答が返ってくる教え方は真摯に対応してくれるので感謝しています。ジャワとは違う立ち方やリズム感が腑に落ちるように身体に入ってきて、小さな子供達に混じって踊るのが楽しみでした。
ひょとYayasanの代表者と話す機会があり、子供達をボランティアで教えてみないかとオファーを受け、YapongというBagong Kussudiarjaさんの作ったジャワとbetawiが合わさるような作品を教えて始めました。Bagongさんの元で習うことができたこのYapongは大好きな作品です。ジャカルタ州の何周年記念の際、Bagongさんによって創作されたこの作品は、小学校や中学、高校などの課外授業などで取り上げられ、色々なバージョンに発展(!?)しつつ踊られています。今ではジャカルタの伝統舞踊として認識されている住民も多いと聞きます。新作が地域に馴染んで伝統舞踊化していく、こうしてインドネシア伝統芸能は新しい風を吹き込みつつ発達、そして大事にされていくんだなと思います。
日本でも教えたことがありますし、何度踊ったことだろう、その踊りを小さな人達、子供達に伝えられるなんて幸せ!
浮き足立っていました(笑)

ボランティアであることも幸いしていました。外国人労働者なので。
(色々制約があるのです。)

目標にしていたジャカルタでのお披露目公演的なものも終わり、さあ次はどの踊りを一緒に踊ろうかなと考え始めた頃から、違和感を覚えるようになりました。代表者は伝統芸能についてあまり知識のない方で、伝統文化を持続させていくためにも無料で文化を学べる場所を作るというけれど、学ぶための基本的なこと、例えば学んだ踊りについてや踊りそのものの基本を学ぶ場を子供達に用意させてもらえませんでした。

気がつくと他のボランティア先生もそうですが、知らされないまま、子供達は毎週のようにどこかで踊っていました。舞台に立つ的なものは、コマーシャルなもの、そうでないものも含めて出演料が発生するかと思います。新しい踊りの練習時間を削ってでも出演のための練習が増え、舞台に立てない子供達は選ばれない子供達という言い方をされるようになりました。なんか違う。そもそも、お披露目会の時からそれだけのために練習していたので、基本的なところを直したい、覚えてもらいたい、というのが、教える立場の見方だったのですが、それも伝わらず。出演料的なものも子供達はもらっていないことが親御さんから耳に入るようになり、ああ、利用されてたなあと思い当たりました。
利用されててもいいから、子供達と一緒に踊りたいなと思っていたけれど、テレビや新聞に彼女が教えてるという発言をしていることが耳に届くようになり、潮時かなあと。彼女が教えてると言うのなら、ボランティアの私は必要ないかなと(笑)
三人のボランティア先生はそれぞれ違う内容を教えていました。きちんとbetawiの伝統を伝えていた先生、各地の伝統舞踊は私、もう一人は今をときめく西ジャワの伝統舞踊でした。年齢も経験も違う三人でしたので内容が重なることもなく、習う側としても面白かったと思います。習う側としても参加していたので、とても興味が満たされました。小さな子供達と合わなくなるのは残念ですが、自分の習い事(他で踊りのクラスに所属)も疲れて行けない日が出てきていたので、一旦、区切りにします。他のボランティア先生も通えなくなったからと連絡をいただいて、同じタイミングで身を引くことにしました。

私自身がインドネシア舞踊を学び始めた時、Topoさんという先生から良い言葉をいただきました。
「あなたは一生かかってもこちらの人と同じ位上手くなることはないだろう、生まれてきた場所も経験も違うから。でもあなたには興味がある。知らないことがたくさんあるから、質問するし覚えようとする。覚えたら誰かに伝えて欲しいし、それがどんなに興味深かったかあなたは伝えることができる。この場所に生まれて外の視点からこの芸能を見たことがない人達にあなたたちの持っている芸能がどんなに面白いことか、素晴らしいものか、伝えることができる。それをお願いね。」

相変わらず踊るのが下手で理解するのに時間がかかりますが、続けていくだけの興味が尽きない世界でもあります。少し一休みしてから、何か良い方法を考えよう。また仲良くなった子供達とも一緒に何かできたらいいな。
舞踊は身体で覚える部分が多いので、やっつけで覚えることが難しいものです。この半年で覚えたbetawiの伝統舞踊を続けて練習していこうと思います。どこかで踊れたらいいなあ、紹介できたらいいなあ。
日本にいた時、muriwuiという屋上にあるカフェで踊らせていただいたことが懐かしく思います。あんなことしたいなあ、夕暮れ時にちょこっと異なる世界に足を運んでもらえるようなこと。外国人労働者なので法律に則った方法を考えようと思います。